2018年2月14日水曜日

望郷


 元同僚のパキスタン人が、郊外の診療施設で診察の予約があるというので、車に乗せていった。

 この国では健康カードを申請すれば、外国人でも無料で医療サービスを受けることが出来る。しかし、健康カードの申請そのものが非常に厄介だ。彼も何度か申請が拒否されたりして、カードを受け取れたのは今年の始めになってから。

 そして、彼のような出稼ぎにとって、例え中古でも車を買うことは難しい。
 かといって毎回タクシーで移動となれば、少ない稼ぎを圧迫し、故郷への仕送りも滞ってしまう。

 かくも出稼ぎの暮らしというのは楽なものではない。それでも歯を食いしばって頑張れるのは、故郷で帰りを待つ家族がいるからだ。
 家族を守るためには時には狡猾になることもある。惨めな思いをしながらも乞わねばならぬ時もある。

 そんな彼らに同情などしても意味はなく、まして上っ面の言葉だけでは彼らの腹を満たすことなどできはしない。

 それぞれが自分の置かれた立場を自覚し、与えられた役割をこなしていくこと。ただただそれだけで、世界は回っていく。




2018年1月22日月曜日

自給自足


 昨年6月の断交以降、それまでサウジを経由して陸路で運ばれていた食料品の多くが店頭から消えた。
 もっとも打撃を受けたのはサウジ製が大勢を占めていた乳製品と、UAE産が多かった卵。いずれも当初はトルコなどから緊急輸入することでカバーしていたが、輸送の距離などからどうしても日付が古く、また空輸コストが上乗せされるために割高になってしまっていた。

 去年の暮れにまずは乳製品に国産品が登場した。それまでも僅かな量だが国産メーカーの商品は並んでいた。ただ味などでどうしてもサウジ産に負けていた。そこへ、牛を国外から4000頭輸入して、味でも差のない国産商品が店頭に並んだ。当初は高い値付だったが、販売が伸びるに連れて値引きが行われ、今月はとうとう以前のサウジ産と大差ないところまで落ち着いてきた。

 更に卵も国産品が大量に出回るようになった。先週スーパーで買った卵は、生産から3日ほどしか経っていない新鮮なもので、かつ値段もそれまでのUAE産に比べても格安に設定されていた。野菜なども消費が増えるに連れて徐々に値が下がり始めている。

 断交自体はまだまだ出口が見えないままだ。

2018年1月16日火曜日



 昨日は日の出前から濃い霧に包まれたドーハ。
 冬のこの時期は、冷えた路面や海面との温度差から霧が発生しやすい。
 いつもなら、日が昇るにつれて消えていく霧。
 ところが昨日は正午を過ぎても海面に張った霧は消えることがなかった。

 普段なら対岸方向にハマド空港がはっきり見えるのだが、まるで雲海のような霧の中に隠れてしまっている。

 ちなみに、霧が発生した場合の路上での運転だが、周囲への注意喚起としてのハザード点滅は実はご法度。知らずに点滅させている車を昨日も大量に見かけた。 自分が見つけられやすいようにという不安からつい作動させてしまうのだろうが、これでは左右に曲がる時や車線変更の際の意思表示ができなくなるため、却って危険な状態を招いてしまう。

 ロービームを点灯させるのが基本で、フォグランプがあるならそれを作動させる。
 普段の視界の良い時は格好だけで点けている車が多いのだが、肝心のリヤフォグが付いているのに使っていない車も少なくなかった。


2018年1月11日木曜日

異国で暮らすということ



 見知らぬ国を訪れる。美しい景色や街並み、あるいは行き交う人々の姿に心躍らせ、ここで暮らしたいと思ったことがある人は、決して少なくはないはずだ。

 しかしながら、そこにある「心地良さ」は 、「お客さん」という立場に付随しているものに他ならない。どんな共同体でも、お客に対して無碍な扱いをするところはない。人間が本来持っているホスピタリティの心と、あるいは「2,3日すれば帰国してしまう、通りすがりの縁の薄さ」に対する警戒心の低さもあるだろう。

 ともかく、そうやって味わった非日常を思い違いしたまま、いつかあの国で暮らす自分を妄想してしまう。経験値の低い若い世代ほどそうだ。

 ところが、実際に生活の場をそこへ移そうとすると、相手の態度や反応が急に変わったことに気づく。お客さんならすぐ消えていなくなる。しかし、働いて暮らす住民となれば話は別だ。仕事を奪い合い、自分たちの習慣や倫理を破壊しに来た「外敵」となる。
 ならば、彼らが持たぬものを持つ者であることを武器に戦うしかない。

 祖国以外の場所で働きながら暮らすというのはそういうことだ。



2018年1月8日月曜日

レンズ購入


 7Artisans(七工匠)の新製品「55mf1.4」の富士フイルム用が、Ali Expressで格安だったのでポチってみた。Ali Expressを利用するのは初めてだが、発注から到着まで中三日。国際発送なのに送料無料で満足度の高い買い物となった。

 レンズ自体は作りも良く、ライカのコピーを彷彿とさせるデザインではある。
 写りも申し分ない。何よりも35cmまで寄れるのが良い。最短まで寄って開放にしてもピント面がきちんと解像しているところも好印象。

2017年12月28日木曜日

現実

 元同僚からメールで「最近知り合った東欧人が仕事を探しているけど、何か心当たりがあったら知らせてよ」と。

 Bccで手当たり次第に送ってるようで、CVが添付されていたので開けてみると、「40代で独身、5年前にムスリムに改宗、大学中退」の男性。

 職歴を見ると2,3年おきにあまり関連性のない企業を転々と移っている。使える言語はヨーロッパ系ばかり。アラビア語や日本語も入れてあるが、いずれも「初級レベル」とあり、それなら書くなよと。まぁ、必死なのは見て取れるが。

 アジア系出稼ぎと一緒にタコ部屋でいいのなら仕事はあるだろう。でも、耐えられないだろうな、きっと。何しに来たのかといえば「イスラームの勉強」だそうだが、勉強ならここにわざわざ来なくても出来る。

 要は”アラブに住んでる自分”に満足したいだけかな。大概「祖国ではムスリムとして暮らすのは難しい」と言うのが決まり文句。実際そうなのかもしれない。何処で暮らしたいと思うかもそれぞれの自由だ。

 それならば死に物狂いで活路を見出すべきなのだが、得てしてこういう人は他力本願なのが困りもの。これまで見た人たちは全員「行けば誰かが拾ってくれる。なんとかしてくれる。だって自分は”○○人”だしムスリムだから」という根拠の無い期待と自信を持ってきたが、ことごとく夢?打ち砕かれて帰って行った。
 「裕福な国だから待遇も良いだろう」というのも幻想に過ぎない。

 今年の法改正で、欧州からの訪問客はアライバルビザで90日間滞在可能になったので、それを利用してこうやって仕事探しにやってくる人も当然出てくるわけで。妻の親類にも「年明けにそっちにいって仕事を探したい」と言っている奴がいて頭が痛い(笑

 実際のところ、企業に書類を送って応募するといった正攻法以外で、理想の仕事が見つかる可能性は殆どない。それに出稼ぎとして働き出したら、勉強する時間なんてまずないと思ったほうが良いだろう。


2017年11月23日木曜日

誇り


 先週、Kataraにて行われていたダウ船フェスティバル。
 最終日にようやく足を運ぶことができたのだが、会場に入って驚いたのが客の殆どがローカル、つまりカタール人の家族連れだったこと。
 これまでのこの手の文化系イベントでは観光客を含めた外国人の姿が目立つのが通常だ。
  自分たちのルーツ、歴史や文化を若い世代に見せることは非常に大切なこと。 断交をきかっけにした愛国心の盛り上がりも関係があるのだろうか。